〜モヤモヤの正体と向き合うために〜
「自分なりに頑張っているのに、なぜか評価されない気がする」
そんなふうに感じながら働いている方は、意外と多いのではないだろうか。
私自身、まさにその感覚に悩んでいた時期があった。
特に新卒で入社した1社目のメーカー時代は、その思いが強かった。
評価とは、極めて曖昧なものである
仕事に対して真摯に向き合い、プロセスも丁寧に、結果もそれなりに出していたつもりだった。
にもかかわらず、なぜか自分ではない隣の誰かのほうが評価されていた。
「自分の方が頑張っているのに、なぜだろう」
そんなふうに、もやもやした感情を抱えていたのを、今でもはっきりと覚えている。
転職後、一転して評価されるようになった経験
1社目では評価されなかった私だったが、転職先の大手人材紹介会社では状況が一変した。
入社からわずか2年で、マネジメントを任されるまでに至ったのである。
同じ自分でありながら、片方の会社では評価されず、もう片方の会社では高く評価された。
業界は異なれど、担当していた職種は似たようなものだった。
では、この「差」は一体何だったのだろうか。
今だからこそ、あの頃の自分に伝えたいこと
あの頃の私に戻れるとしたら、どのように振る舞えば、あんなに悔しい思いをしなくて済んだのだろう。
そして、今まさに同じように「会社で評価されていない」と感じている方がいるとすれば、どんな視点を持ってほしいのだろうか。
この文章は、そんなかつての自分自身に向けて書く“手紙”のようなものでもある。
今の自分だからこそ気づけた「評価の正体」や、「環境との相性」、そして「自分の見せ方」について、少しずつお伝えできればと思っている。
0. 大前提として|評価とは曖昧なものである
まずお伝えしておきたいのは、会社における「評価」とは、非常に曖昧なものだという前提を持っておくことが大切だということだ。
というのも、評価は単に実績や数値だけで決まるものではなく、「上司にとって好ましい行動ができているか」「そう見えているかどうか」といった、極めて主観的な要素によって大きく左右される側面があるからである。
※ここで勘違いしてほしくないのは、「とにかく上司に好かれるべき」という話ではない。あくまでも、評価が“主観に基づく部分を含んでいる”という事実を認識しておこうということである。
もちろん、ほとんどの会社には評価制度が存在しているし、なかには「評価制度の整備ができていること」を会社の強みとして打ち出しているところも多い。
そして、私自身の考えとしても、制度として整っていることに越したことはないと感じている。
ただし、ここで注意しておきたいのは、評価制度が整っているからといって、必ずしも“評価そのもの”が公正・公平に行われるわけではないという点である。
制度があっても、評価を下す上司があなたの行動のすべてを見ているわけではない。
また、常に正しい判断がなされるとも限らない。人である以上、見落としや偏りがあるのは当然だからだ。
だからこそ、「自分の価値が正しく評価されていないかもしれない」と感じたときに、それをすべて自分の実力不足と結びつけてしまわないこともまた、非常に大切な視点ではないかと思っている。
1. 上司の「こだわり」を突こう
評価とは本来、公正・公平であってほしいものだが、現実はそう簡単ではない。
前提として、評価者である上司があなたの行動すべてを把握しているわけではないし、常に正しい判断を下しているとも限らない。
では、そんな中で私たちはどう立ち回ればいいのだろうか?
答えは、「上司のこだわりを突く」こと
まず最初に意識したいのは、評価者である上司の“こだわり”を見抜くことである。
上司という立場にある人は、自分がなぜ評価されてきたのか、自分が上司である理由は何なのか――
そのあたりを、ある程度は言語化して理解していることが多い。
つまり、自分がこだわってきた行動や姿勢、そして会社から評価された“正しい振る舞い”について、一定の基準を持っているのである。
※ここでの「正しさ」はあくまで上司の主観であって、絶対的なものとは限らないが、それでも評価を握る要素としては無視できない。
上司の価値観に合わせて行動し、言語化する
大切なのは、その上司の価値観に沿った行動を、あなた自身の業務の中に取り入れていくことである。
そして、それをただ実行するだけで終わらせず、報告や日々の会話の中で“意識的に取り組んだこと”として言語化することも忘れてはいけない。
たとえば、あなたの上司が「商談の中身こそが最も重要だ」と考えているタイプだったとしよう。
これまであなたが「商談件数」というKPIに重きを置いてきたとすれば、
少し視点を変えて、件数よりも“中身の濃さ”を意識して動いてみるのだ。
伝え方ひとつで、評価は変わる
そして報告の場では、こんなふうに伝えてみてほしい。
「今月はあえて件数を少し抑えた分、商談の質にこだわりました」
「顧客のニーズ深掘りに時間をかけた結果、成約率は○○%に上がりました」
ここまで語ることができれば、上司はきっとあなたのことを「分かっている部下」として一目置くはずである。
なぜなら、人は自分が“正しい”と信じてこだわってきたことを否定できないからだ。
自分の評価は、自分でつくれる
評価は運任せではない。
評価者が何を大切にしているのかを知り、自分の行動と伝え方をチューニングしていくことで、
「正しく伝わる努力」はできるのである。
ぜひ、あなたの上司が何に価値を置いているのかを観察してみてほしい。
その“こだわり”を、自分の行動に落とし込むことから始めてみよう。
2. 「人がやりたがらないこと」を、あえてやってみる
評価を高めるための一つのシンプルなアプローチとして、「他の人がやりたがらないことを率先してやる」という方法がある。
多くの場合、「やりたくない」と感じることは、実は周囲の人たちと共通している。
身近な例で言えば、たとえばトイレ掃除などは典型的な例だろう。
誰もが必要だとわかっているけれど、できればやりたくない――そんな存在である。
営業職における「やりたくないこと」とは?
営業職であれば、それは「飛び込み営業」や「テレアポ」といった行動が該当するのではないだろうか。
今や非効率だとさえ言われることもあるが、それでも一定の成果につながることがあるのも事実である。
ここで重要なのは、「やりたくない」と思われがちな行動の中から、なおかつ“数字に直結するもの”を見つけるという視点だ。
たとえば、テレアポを誰よりもやってみる
もしあなたが営業職で、周囲がテレアポに消極的なのであれば、あえてそこに注力してみるのも一つの戦略である。
もちろん、いきなり大量のアポを取るのはハードルが高いと感じるかもしれない。
その場合は、もっと小さな行動――たとえば「アポ後のフォローメールを誰よりも丁寧に送る」などでも構わない。
大事なのは、他の人が面倒に感じて手を抜きがちな部分に対して、自分は真剣に取り組む姿勢を見せることである。
平均点が低い場所こそ、評価の伸びしろがある
人がやりたがらないことは、往々にして全体的な平均点が低くなりやすい。
つまり、少し工夫して継続的に取り組むだけで、相対的に「目立つ」ことができる分野でもある。
「この人は、みんながやりたがらないことをきちんとやっている」
その事実だけでも、上司や同僚からの見え方は変わってくるはずだ。
やりたくないことにこそ、チャンスが眠っている。
ぜひあなた自身の職場の中で、「周りが避けている仕事は何か?」を一度見つめ直してみてほしい。
その一歩が、評価を大きく動かす可能性を秘めているのである。
3. 上司の仕事を考えてみる
ここでは、いわゆる「視座を上げる」という考え方についてお伝えしたい。
これは単に評価を高めるためのテクニックというよりも、あなた自身のスキルや思考の幅を広げる上でも、非常に重要なアプローチである。
自分の仕事だけでなく、上司の「目的」に目を向ける
たとえば、あなたが営業職に就いているのであれば、おそらく日々追っているのは「個人の予算数字」だろう。
では、あなたの上司は何を追っているだろうか?
多くの場合、それは「チーム全体の数字」だったり、「サービス全体の成長」だったりする。
つまり、視座を上げるということは、「自分の上司の目線に立ってみる」ことだと捉えてほしい。
上司の課題から、自分の行動を逆算する
仮に、上司が「チームの数字」を追っているのであれば、あなたができることは、
「どうすればチーム全体の成果が上がるのか?」という視点で施策を考えてみることだ。
たとえば、メンバー同士で成果の出たトークスクリプトを共有する仕組みを提案したり、
後輩の商談準備を手伝ったりと、チームにとってプラスになる行動を自ら起こしてみる。
あるいは、上司が「サービスのグロース」に関心を持っている場合には、
サービスのビジネスモデルに目を向けて、「今の営業プロセスの中でできる改善は何か?」といった視点で考えてみるのも良いだろう。
守備範囲を広げることは、評価だけでなく成長につながる
「守備範囲が広い人が評価されやすい」という話を耳にしたことがあるかもしれない。
このとき注意したいのは、評価されたいからはみ出すのではなく、上司の視点を理解し、その目的に貢献する意志を持って動いてみることである。
結果として、「この人はただの実行者ではなく、チームや事業の成長まで見据えて動いている」と受け取られることになる。
最初から完璧な施策を出す必要はない。
まずは「上司の考えていることを想像してみる」という一歩を踏み出すだけでも、視野は大きく広がっていく。
そして、その思考のクセがついたとき、あなたは自然と“評価される人”へと近づいているはずである。
最後に|評価は“絶対的なもの”ではない
今回は、評価されにくいと感じている方に向けて、3つの視点をお伝えしてきた。
- 上司のこだわりを突くこと
- 人がやりたがらないことをあえてやること
- 上司の仕事を考えること
どれも小さな工夫ではあるが、日々の行動の中で意識して取り入れていくことで、少しずつ評価の受け取られ方は変わってくるはずである。
ここで最後にお伝えしておきたいのは、「評価は、必ずしもあなたの実力を正確に反映しているわけではない」ということだ。
そして、それは決して悪いことではない。
私自身、1社目の会社ではまったく評価されていなかった。
真面目に働いていたつもりでも、結果を出していても、なぜか報われない感覚ばかりが残っていた。
けれど、転職を経て環境が変わった2社目では、わずか2年でマネジメントを任されるまでになった。
同じ自分でも、評価は大きく変わる。
そんなことは、実際にいくらでも起こりうるのである。
だからこそ、必要以上に自分を責めすぎなくていい。
そして、焦らなくていい。
人が変われば環境も変わるし、環境が変われば評価も変わる。
自分自身を少しずつ変えていくのもいいし、ときには「環境を変えてみる」という選択もあっていい。
ずっと同じ状態が続くことはない。
だからこそ、何かが変わることを、信じて待ってみるのも悪くないのではないだろうか。